沈黙する記憶
「あぁ。杏がいなくなった日の事だ」


「その話なら、警察にも親にも散々話してきた」


「そうかもしれないけれど、俺たちはまだちゃんと聞いてない」


夏男が裕斗から視線を外した。


こうして会話することすら夏男にとっては大きな体力の消耗になるのかもしれない。


さっきからニコリとも笑わないし、すべてに疲れ切った表情を浮かべている。


「お前たちは何を聞きたいんだ?」


夏男が誰とも視線を合わせないまま、そう聞いて来た。
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