沈黙する記憶
怪訝そうな表情を浮かべながら、夏男が答える。


「そっか……。杏とは、遊ぶ約束はしてなかったの?」


「杏とは……」


夏男がこめかみに手を当てる。


何かに耐えるように表情が歪んだ。


「課題が終わってからゆっくり遊ぼうって話になってた」


「そうなんだ」


あたしはそう返事をして、チラリと後ろを振り向いた。


学校まであと数分で到着してしまう距離だ。
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