沈黙する記憶
「ところで夏男、テストの結果はどうだったんだよ」


克矢が学校内と同じような調子で夏男に話しかける。


「あぁ……テストはあまりよくなくて……」


「まじで? 俺もなんだよ」


「杏が心配してたよ。夏男が落ち込んでたって」


さやが言う。


その言葉に夏男は足を止めた。


「杏が……?」


「そうだよ。夏男には言ってないかもしれないけど、あたしたちにはそう言ってた」


あたしはそう返事をした。


「……そっか……」


「杏は夏男の事が大好きだったんだね」


由花がそう言うと、夏男は喉の奥で言葉をつかえさせた。


「ごめん……体調が悪いんだ。今日はもう帰っていいかな」


夏男がこめかみに手を当てて呻くようにそう言った。
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