沈黙する記憶
ほんの数週間前の事なのに、杏の事があってずっと昔のニュースのように聞こえてくる。


だけどそのニュースが流れている時は、杏は確かにここにいた。


あたしたちの輪の中にいたんだ。


「明日は制服で集合しない?」


気が付けばあたしはそう言っていた。


夏男の記憶を取り戻させるためには、やっぱり制服を着て当時と同じ状況を作り出した方がいい。


「でも、怪しまれるよ?」


さやが不安そうな表情を浮かべる。


「そうだよ。登校日だってまだまだ先だし、騙せないよ」


由花が言う。
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