沈黙する記憶
小さな従業員駐車場とトイレと搬入口が目に入った。


こんな建物の裏で待ち合わせなんてするかな?


そう思い、一旦戻ろうと身をひるがえしたその時だった。


目の前に夏男の姿があり、思わず小さな悲鳴をあげてしまった。


「杏……」


夏男が今にも泣きだしてしまいそうな声でそう言った。


「な、夏男。なに泣きそうな顔をしているの?」


あたしは必死で冷静さを装い、そう言った。
< 189 / 229 >

この作品をシェア

pagetop