沈黙する記憶
☆☆☆

そして、夕方。


外はオレンジ色に染まり、5時のチャイムが聞こえてきてあたしは机から顔を上げた。


読んでいた文庫本がシオリを挟む前にパタンと閉じてしまい、あたしは小さくため息を吐いた。


そして、スマホを確認する。


杏からの連絡はまだない。


あれから5時間以上は経過しているから、もう夏男と会って話も終わっていることだろう。


それでも連絡がないということは、夏男の反応が好ましいものではなく、こじれているのかもしれない。


そう考えると、腹の底の方からジワリと不安が浮かんできた。
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