沈黙する記憶
まるで自分の事のような焦りを感じる。


スマホを持つ手が震えていた。


手のひらに汗が滲み、うまく操作できない。


でも、もう待つのは限界だった。


あたしは焦る気持ちを落ち着かせながら杏に電話を入れた。


無機質なコール音が聞こえて来る。


いつもの呼び出し音のはずなのに、それはとても冷たい音楽を聴いているような気持ちになった。


コール音が鳴り響くたび、あたしの胸に不安が膨らんでいく。
< 20 / 229 >

この作品をシェア

pagetop