沈黙する記憶
山の中
夏男の車は更に街から遠ざかって行く。


見たことのない景色が続き、太陽はどんどん傾いていく。


夏男は時々コンビニに寄って休憩を挟みながら車を走らせた。


「どこに行くつもりなんだろう……」


さすがに疲れの色が見えてきている由花がそう言った。


「あの車には死体が乗っている。それを隠す場所を探しているんだろうな」


裕斗が冷静な口調でそう言った。


しかし、その声のトーンが少しだけ上ずっている事に気が付いた。


裕斗はいつでも冷静でいると思っていたけれど、本当はみんなを不安にさせないために必死で我慢していたのかもしれないと、今ごろ気が付いた。
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