沈黙する記憶
夏男の後を追いかけていくと、そこは大きな木が立っていた。


あたしたちは息を殺し、夏男の様子を隠れて見ている。


夏男は持ってきたスコップで大きな穴を掘り進めていき、あたしたちが近くにいる事には全く気が付かない。


土を掘って行く音がやけにリアルで、時折吐き気さえ感じさせた。


そして、しばらくすると夏男の動きが止まった。


目を見開き困惑した表情を浮かべ、地面に膝をついて穴の中へ手を伸ばす。


穴の中から、黒いごみ袋がチラリと見えた。


夏男が今持ってきたゴミ袋はまだ埋められてはいない。
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