沈黙する記憶
「克矢、どうしたの?」


「マスコミに追いかけられずに帰れてるか、ちょっと心配になってな」


克矢はそう言い、頭をかいた。


「裕斗も同じ事言ってた」


あたしがそう言うと、克矢は軽く笑った。


「どうせだから、送っていってやろうか」


「いいの? あたしの家もうすぐそこだけど」


「気にすんなよ。実は今日車で来てたんだ」


そう言い、克矢は車のキーをポケットから取り出した。


「嘘、よく気が付かれなかったね」


あたしは驚いてそう言った


もし車で登校して来ている事がバレれば問題になる。


「あぁ。もう慣れたから」


「え?」


首を傾げた次の瞬間、克矢の手があたしの口を塞いでいた。


一瞬の事で頭の中は真っ白になる。


気が付けば目の前に克矢の車があり、トランクが開けられるのが見えた。
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