沈黙する記憶
あたしは克矢を睨み付けた。


ホテルのポイントがやけに多いのは、こうして女の子たちを無理やりホテルに連れ込んでいたからだったんだ!


「なんだよその目は。今更泣いてもわめいてもお前は逃げられねぇぞ」


克矢の顔がグッと近づき、ガムテープ越しにキスをされる。


それだけで強烈な吐き気が込み上げて来る。


悔しくて情けなくて無力で涙が滲んできた。


杏も、こんなに恐ろしい目にあったんだ。


「夏男のおかげで分かった事が1つある。女と楽しんだあとは、その女を切り刻んで埋めればいいんだってな」


耳元で克矢が囁く。


生ぬるい吐息に、背筋が凍った。


涙で視界が滲み克矢の下品な笑顔も歪んだ。


そして克矢の手がトランクのドアにかかる。


あたしは必死で身を動かし、抵抗した。


しかし克矢は同じほほ笑みを浮かべたままトランクのドアを閉めたのだった……。
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