沈黙する記憶
☆☆☆

全身の力が抜けて目を開けていることも困難だった。


あたしは全裸でお湯のはっていない浴槽に入れられ、眩しい蛍光灯の光を我慢していた。


ここで目を閉じてしまえばもう二度と開ける事はできないだろう。


そう思い、必死で瞼をこじ開ける。


全身青あざになりあちこちに傷がついていた。


腹部がやけに痛み、声にならない絶叫を上げていたことを思い出す。


浴槽の外からは克矢が何か準備している音が聞こえてきていた。


本当に、あたしの体を切り刻むつもりなんだろうか。


杏と同じように山の中に埋められるのだろうか。


そう思っても、もう涙もでなかった。
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