沈黙する記憶
一体何が起こっているの?


そう思うが、あたしの体はピクリとも動かない。


あちこち傷つきすぎて、どこが痛むのかもわからない。


「千奈!!」


突然近くでそんな声が聞こえてきて、あたしはどうにか目だけ動かして裕斗を見た。


「なんてことだ……!!」


裕斗の顔が青ざめる。


あたしに駆け寄り、口に張られていたガムテープが剥がされた。


「ゆう……と……」


乾いた声で名前を呼ぶと裕斗が涙を流した。
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