沈黙する記憶
友人たちからのメールはそのままにして、あたしは夏男に電話を入れた。


朝早い時間だけど、じっとしてはいられなかった。


『もしもし?』


少しくぐもっている夏男の声が聞こえて来る。


「もしもし夏男? 昨日杏から何か連絡はあった?」


『いや、なにもないよ……』


夏男は沈んだ声でそう言った。


あたしよりも夏男の方が眠れていないのかもしれない。
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