沈黙する記憶
杏が言った言葉を思い出した瞬間、僕は2度目の爆弾を頭に落とされた気分だった。


『あたし、子供ができたみたい』


そうだった。


たしか、杏はそう言っていた。


思い出した瞬間この沈黙が理解でき、背中に流れる汗は更に大量になってゆく。


僕と杏は高校3年生。


今は夏休み。


受験や就職という大切な節目にいることは確実だった。


そんな時の、爆弾。


僕はひきつった笑みを浮かべて杏を見た。


杏は相変わらずの無表情で、僕と会話をする気などなさそうだ。


僕の自然は自然と杏の腹部へと向いていた。
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