沈黙する記憶
☆☆☆

結局、ゲームセンターにも杏の姿はなかった。


だけど、必死で杏を探そうとしている夏男の姿を見ていると夏男を見ているとさっきまでの疑いが少しだけ晴れていた。


なによりそう感じたのは、休憩で入った喫茶店での出来事だった。


冷たいアイスティーを飲んで落ち着いた所で、夏男はこう言い出したのだ。


「杏の両親はもう連絡を入れているかもしれないけれど、俺たちでも連絡を取ってみないか」


「連絡って、誰に?」


「いつもの仲間に決まってるだろ」


夏男の言葉にあたしは一瞬にしてクラスメートたちの顔が浮かんでいた。


夏男が杏の失踪に関わっていたとすれば、自分から友人たちを巻き込んで大事にはしないはずだ。


そういえば、警察に通報していると言ったときも夏男は動揺をみせなかった。


「裕斗と克矢とさやと由花?」
< 42 / 229 >

この作品をシェア

pagetop