沈黙する記憶
☆☆☆

誰もいない小さな公園のベンチで、あたしは裕斗と並んで座っていた。


公園の外にある自販機で買ったジュースがそれぞれに入られている。


「今日聞いた以外に、何か知っていることがあるんだよね?」


紅茶を一口飲んだ裕斗がそう聞いてくる。


「うん……」


あたしは膝の上に両手を置き、その手の中でオレンジジュースの缶を握りしめていた。


緊張で喉が渇いているのに、ジュースを飲む気になれない。


「実はね、杏と連絡がとれなくなったあの日……杏からこんなメールが来たの」


そう言い、あたしはスマホを裕斗に見せた。
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