沈黙する記憶
「そ……んな……」


今度はあたしが言葉に詰まって何も言えなくなってしまった。


あたしが杏にすぐメールの返事をしていれば自体は変化していたのかもしれない。


そう思うと体中の体温が奪われていくようだった。


「もしかしたら、の話だよ? 千奈を責めているわけじゃない」


慌ててそう言う裕斗。


「わかってる……」


あたしは小さな声で返事をした。


「これほど大事な用事だから、杏は千奈にメールを送りそしてすぐに夏男にメールを送るつもりだった。だけど、千奈にメールを送った直後、何かが起きて連絡を入れることができなくなった……」


「それって、事件の可能性もあるってことだよね?」


そう聞くと、裕斗は頷いた。


「あぁ。杏の性格から考えるといつでも周囲を見て行動していると思う。だけど、不意に事件に巻き込まれてしまうような事があれば、さすがに対応できないだろうな」


と、裕斗は言った。


だけど事件となるとスマホの電源が入っているのが気になって来る。
< 54 / 229 >

この作品をシェア

pagetop