沈黙する記憶
「よし、届いた。杏はそれからすぐに出かけたとする。部屋を出て階段を下り、靴を履きかえて、外へ出る」


そのイメージを頭の中で想像する。


想像の中の杏が外へ出ると同時に、あたしと裕斗は自転車を歩道の隅に置いたまま歩き出していた。


「裕斗の家までは徒歩だったのかな?」


「たぶん、そうだと思うんだ」


「どうして?」


「杏は妊娠していた。自転車は避けたんじゃないかと思って」
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