沈黙する記憶
夏男に黙ってこんな事をしているという後ろめたさから、あたしは数歩あとずさりをした。


そう言えば、夏男は杏が妊娠していることを知っているんだろうか?


そんな話は一切口にしないから何も知らされていないのかもしれない。


そう考えていると、玄関が開いて夏男のお母さんが出て来た。


あまり会った事はないけれど、授業参観の日や体育祭や文化祭で時々見かけたことがある。


ほっそりとしていて、優しそうな印象は持っていた。


「あら、2人とも……」


夏男のお母さんは突然の訪問客に驚いたように目を丸くした。


しかし、杏の事はさすがにしているのかすぐに何かを理解したような表情になった。
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