沈黙する記憶
そんな中運転手が突発的に杏を誘拐するような気持ちになるだろうか?


いくら杏が可愛くても、犯罪者になってまで杏を自分のそばに置いておきたいと思うだろうか?


考えれば考えるほど現実離れしている。


「白昼堂々の犯行でないとすれば、杏は今日俺たちが通った道は歩いていないということになるかもしれない」


裕斗の言葉にあたしは瞬きを繰り返した。


「でも、夏男の家までの最短距離ってあの道でしょ?」


妊娠中の杏がわざわざ遠回りをするとは考えにくい。


夏男の家まで行くなら、必ずあの道を通る。
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