沈黙する記憶
「でもそれじゃぁ夏男に迷惑がかかる」


あたしは呟いた。


「そうだ、そこだよ。杏は賢い子だ。自分の家出に好きな人を巻き添えにするとは考えにくい。一方で、夏男と杏との間に何か起こりわざと夏男を困らせるような事を言い、自分から姿を消したと言う可能性はぬぐいきれない」


「何かって……」


何も思い当たるところはない。


夏休み前の2人はいつも通り仲がよさそうで、昨日見せてもらったプリクラも一緒に撮っている。


「夏男に直接聞くのがいいけれど、こんな事態になってしまったら何かあっても何も言えないかもしれないよな」


裕斗の言うと通りだった。


ここまで杏を捜索しても見つからず、事態は大きくなっていっている。


そんな中、杏と喧嘩をしていたなんて事、素直に言えるとは思えなかった。


「杏失踪の可能性はまだまだある。とりあえず、潰せそうな可能性から潰していこう」


裕斗はそう言い、楽しそうに笑ったのだった。
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