沈黙する記憶
☆☆☆

それから40分後。


呼び出した夏男がファミレスにやってきていた。


あたしの前に、裕斗と並んで座る夏男。


少しだけ目の下のクマが濃くなっているように見える。


髭も処理していないため、25歳くらいに見える。


「夏男、お昼は食べたの?」


あたしがそう聞くと、夏男は「いや」と、首を左右にふった。


「なにか食べなよ」


「いや、僕はいい。飲み物だけ注文する」


「食欲がないのか?」


裕斗が聞くと、夏男は力なく頷いた。


朝から何も食べずに杏を探し回っていたのかもしれない。


たった数日で一気に老け込んでしまった夏男にあたしの胸は痛んだ。


やっぱり、夏男は嘘はついていない。


さっきの裕斗の推理通り、第三者が絡んでいるのだろう。
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