沈黙する記憶
裕斗はそこまで行って首を傾げた。


杏があたし以外の誰かに妊娠を告白していた……。


その可能性は否定しないが、相手が誰だったのかは全く想像ができなかった。


自慢じゃないが杏と一番仲がよかったのはあたしだ。


表面上の関係ではなく、他の誰にも言えない相談もできる関係だった。


あたしと同じくらい杏と仲の良い子なんて、思い浮かんでこなかった。


「仮に夏男の親が絡んでいたとしたら、杏は子供を中絶させられているかもしれないな」


裕斗が少しだけ視線を伏せてそう言った。


「なんて事言うの!?」


あたしは思わず大きな声を出していた。
< 83 / 229 >

この作品をシェア

pagetop