沈黙する記憶
代わりに、メールには写真が添付されていた。


《杏がいなくなった時の服装です》


メールの文面はそうなっていて、写真には杏が着ていた服の絵が描かれている。


あたしも何度か見たことのある、バラ柄のワンピースだ。


『間違えてワンサイズ大きいのを買っちゃった』


そう言って照れたように舌を出していた姿を思い出す。


しかし、その絵の中の杏は白いスニーカーを履いていた。


ワンピースにスニーカー?


あたしは違和感を覚えてその絵をジッと見つめた。


スニーカーを履くのは杏が妊娠していたから。


だけど、ワンピースを選んだ理由は……?


『ワンサイズ大きいのを買っちゃったの』


「ワンサイズ大きい……」


あたしは呟き、そしてハッと息を飲んだ。


ワンピースだと腹部を圧迫しない。


それに大きいサイズなら体型を隠す事もできる。
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