Orangette
01
「バレンタイン、手作りな」
その一言で喜々と作ってしまった自分が憎い。
片思いの相手の有馬 和人(ありま かずと)は紗良(さら)の勤めている会社の御曹司だ。
才能も美貌も兼ね備えた彼は、手作りのチョコレートはおろか、高級なチョコレートですら貰い飽きているにちがいない。
紗良は自分の作ったチョコレートが入った箱を、苦々しい気持ちで眺めながら、深いため息をついた。
誰ともかぶらないようにオランジェットにした。
オレンジの砂糖漬けに、半分だけチョコレートをコーティングしたフランス産のチョコレート。
甘いチョコレートの中に、オレンジの皮の苦味が口の中に広がる味は、この恋とよく似ている。
「世田谷(せたがや)」
「ひゃあっ!」
噂をすればなんとかというやつだ。
驚く紗良に「なんて声出してんだ、お前」とクスクス笑って、上機嫌の和人が立っていた。
なぜか手ぶらだ。
「お疲れ様です」
「チョコレートは?」
少しだけ屈み、紗良の耳元で和人は低く囁いた。
耳が熱くなり、胸の鼓動が早くなる。
いつもこうやってからかってくる和人に翻弄されてばかりだ。
その一言で喜々と作ってしまった自分が憎い。
片思いの相手の有馬 和人(ありま かずと)は紗良(さら)の勤めている会社の御曹司だ。
才能も美貌も兼ね備えた彼は、手作りのチョコレートはおろか、高級なチョコレートですら貰い飽きているにちがいない。
紗良は自分の作ったチョコレートが入った箱を、苦々しい気持ちで眺めながら、深いため息をついた。
誰ともかぶらないようにオランジェットにした。
オレンジの砂糖漬けに、半分だけチョコレートをコーティングしたフランス産のチョコレート。
甘いチョコレートの中に、オレンジの皮の苦味が口の中に広がる味は、この恋とよく似ている。
「世田谷(せたがや)」
「ひゃあっ!」
噂をすればなんとかというやつだ。
驚く紗良に「なんて声出してんだ、お前」とクスクス笑って、上機嫌の和人が立っていた。
なぜか手ぶらだ。
「お疲れ様です」
「チョコレートは?」
少しだけ屈み、紗良の耳元で和人は低く囁いた。
耳が熱くなり、胸の鼓動が早くなる。
いつもこうやってからかってくる和人に翻弄されてばかりだ。
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