浮気の定理
「わかってる……、ごめん」
そう桃子に素直に謝ることが出来たのは、その言葉の重みに気付いたから……
桃子は正しい。
私の決断を桃子は許さないだろう。
だけどどうすることもできない。
本当のことも言いたくない。
私がこの秘密を墓場まで持っていけばすむ話だ。
飯島さんとも、もうきっと会わない方がいいんだろう。
だけど、私はそれが一番辛かった。
仕事も辞めなければならない。
初めて飲み会に出かけたあの日に戻れるなら戻りたいと思った。
あの飲み会に参加さえしなければ、何も始まらなかったかもしれない。
ただの副店長と店員という関係でいられたかもしれないあの日に……
私は心底、戻りたかった。