浮気の定理
けれどそのことに触れる勇気がなくて、涼子は聞きたい気持ちを抑えた。



デザートのココナツ風味のカボチャプリンと珈琲が運ばれてきた頃――



それまで誰もが聞きたくて聞けなかったあのことを、桃子が問いかけた。



「……ありさ、あれからどうした?」



みんなが一斉に息を呑む。



一瞬にして、場の空気が凍った。



その中でも、質問された張本人のありさだけが、落ち着いているように見えた。



まるで、そう聞かれるのがわかっていて、答えを用意してきたみたいに。
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