浮気の定理
誰もがわかってたんだと思う。



それがありさの嘘だってことが……



だけど誰一人それを口にするものはいなかった。



これが……



ありさの決断。



「……そう」



息を吐き出すようにそう言った桃子は、静かにありさから視線を外した。



もう済んでしまったこと。



今さら何か言っても、なんにもならないってことを、みんな知っている。



「じゃあ、ありさの赤ちゃんに!」



真由が突然グラスを持ち上げた。



不可解な顔で真由を見つめると、「弔いよ」と小さく呟く。
< 135 / 730 >

この作品をシェア

pagetop