浮気の定理
1月も半ばを過ぎれば気温がどんどん低くなる。



加えて雨が降らないものだから、記録的な乾燥注意報が出ているらしい。



暖かい店内から外に出た瞬間に、ブルッと体が震えた。



凍てつくような空気が顔を刺激する。



涼子はマフラーを口元まで上げて、コートのポケットに入っていた手袋を慌ててはめた。



「次は私が担当で大丈夫だから」



肩まで伸びたセミロングの巻き髪をふわりと揺らしながら、桃子が言った。



マフラーをしてこなかったみたいで、グレーのカシミアのコートの襟をキュッと合わせてる。
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