浮気の定理
彼が私を抱き止めながら、ゆっくりと歩を進めた。



お会計はきっと私が寝てる間に済ませたんだろう。



ふらふらと彼に寄りかかりながら店を出る。



後ろから、バーテンダーの彼のありがとうございました、と言った声が聞こえた。



エレベーターに乗り込むと少しだけ彼に叱られた。



「弱いくせに、なんであんなに飲んだんだ?」



いつもは誉めることしかしない彼が、叱ってくれたことに、ちょっぴり嬉しくなる。



「ん~、待ちくたびれちゃったから?」
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