浮気の定理
それが泣いてるように見えたんだろうか?



彼が急に私を抱き締めた。



――かかった!



私はそうほくそ笑む。



力一杯彼にしがみついて、お願い……一度でいいの……と、ここで殺し文句。



しばらくの沈黙のあと、彼は黙って私の手を引いて歩き始めた。



どこにいくの?なんて野暮なことは聞かない。



だってそんなの分かりきってるから……



こうして、私と北川の関係は始まった。



それももう半年近くなる。



一番最初に訪れた初めての場所。



それが、このホテルだった。
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