浮気の定理
たまには違うホテルでという彼の提案に待ったをかける。



私と寝たいなら、この初めての場所じゃなきゃ嫌だと駄々をこねた。



いつものホテル、いつものbar、いつもの部屋、いつものベッド……



いつもの場所がただ欲しかっただけなのかもしれない。



だけどここに来れば彼を感じることが出来るって安心できた。



人のものを独占できたような錯覚。



結局、一度でいいと言った私の願いは聞き届けられたけど。



今度は彼が私の体の虜になった。



もうそれから一度も、私から会いたいなんて連絡したことはない。



彼が私を抱きたくなった時、それが私たちの合図。
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