浮気の定理
「「ありさ」」



声をハモらせてそう答えると、ありさはそうだっけ?と首を傾げてから、また前を向いてレジの方へと歩き出した。



お会計を別々にしてもらってから、私たちは店を出た。



昼間は暖かかったのに、さすがに11月ともなれば、陽が落ちると急に冷える。



ありさと真由は同じ沿線だから、店の前で涼子は別れた。



一人でとぼとぼと駅に向かいながら、涼子は桃子のことを思う。



28歳という年齢は、いろんな部分で分岐点なのかもしれない。



真由やありさだって、口には出さないけれど、きっとそれなりの秘密は持っているんだろう。



涼子も、ないとは言い切れないのだから……
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