浮気の定理
「……ごめんなさい

今日みたいなことは二度としません」



正座をした状態で、深々と頭を下げる。



だけどこのくらいで彼の怒りが収まらないことは知っていた。



勇が立ち上がった気配がした。



それと同時に私の体はビクッと震える。



だけどここで逃げたら長引くことを、三年の結婚生活で学習していた。



体に力を入れて踏ん張ることが、私が出来るせめてもの抵抗。



――ドスッ!



鈍い音が響く。



「ウッ……ゲホッゲホッ!」



横っ腹に蹴りが一つ入った。



これでも加減してやってるのだと、夫は言う。
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