浮気の定理
最初はわからなくて、何度も抵抗した。



しかもあんなに殴られた後に、愛してるなんて言えなくて……



今の3倍以上は殴られていたと思う。



だけどどんなに怒っていたとしても、顔だけは殴らなかった。



外に買い物に出たとき、恥ずかしいだろうからと。



それが私に対する愛情なんだと、彼は言った。



いつからだろう?



いかに彼のお仕置きが短くなるようにと考えるようになったのは……



いつからだろう?



子供の前では決して怒らない夫を、いい父親だと思うようになったのは……



彼の歪んだ愛情に、私はどんどん流されていく。



逃れられない迷路の中をさ迷っているかのように……
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