浮気の定理
彼は意外そうな顔をして、私の顔をまじまじと見た。



そして一言。



「嘘だろ?」



清水の舞台から飛び降りる勢いで告白したというのに、なぜ嘘だと思うのかわからなかった。



「……ほんと……です」


消え入りそうな声でそう言えば、彼は信じられないといった様子で馬鹿にしたように笑う。



「あんなに叱られてんのに、よくそういう気持ちになったな?」



まだ狐につままれたような顔をする彼に、私は必死で自分の気持ちを伝えた。



「し、叱られたのは!私がどんくさいからで……

長谷川さんはいつも叱りながらフォローしてくれてましたし!

最近は、誉めてもらえることも増えて……笑顔が素敵だなって……思いました!」
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