浮気の定理
体の痛みに加えて朦朧とする意識。



それだけじゃない、彼への恐怖で私の体は震えていた。



わかるよな?と言われても、言葉が出てこない。



小さく頷くのが精一杯だった。



「涼子……愛してる」



もう一度彼はそう呟く。



頷くだけでは満足しないのだと思った。



彼は私が愛してると言うのを待ってる。



だけど、今、この状況でそんなこと言えるはずがない。



――DV。



そんな言葉が頭に浮かんだ。



まさか、自分の身に襲いかかるなんて思ってもみなかった言葉。
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