浮気の定理
「離婚て……なんで?

そこまで揉めてるなんて、あたし聞いてないよ?」



離婚という決断をするまでに、きっといろんな葛藤や苦しみがあったに違いない。



それなのに何の相談もしてくれなかったことに、ありさはショックを受けているんだろう。



けれど涼子は、ありさとは別の思いでショックだった。



きっと自分に電話をくれた時の桃子は、誰かに助けてほしかったに違いない。



誰かに相談するという選択肢を、彼女から奪ってしまったのは自分かもしれないのだ。



桃子はそっと目を伏せながら、ごめんね?と小さく呟く。
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