浮気の定理
家賃の方が負担は大きかったものの、雅人はそれ以外に自分の店の家賃も払わなければならなかったから、私の方から申し出た形だった。



今はたぶん、店で働いているあの女の子と暮らしてるんだろう。



だけどもうそのことに対してはなにも感じない。



優しくなったと思われた雅人の態度が、離婚を切り出すためのものだったと知ったのは、ついこないだのことだ。



不思議と涙も出なかった。



あんなに好きだと思っていた雅人に、なんの感情も湧いてこなかった。
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