浮気の定理
長い長い雅人との確執は、それほど胸に深い傷を残していたのかもしれない。



「離婚してほしい」



そう、雅人に言われた時、なぜだか胸のつかえが取れたような気がした。



もうこんなに寂しくて悲しい生活を、やっと終わらせることが出来るんだと……



側にいるのに遠く感じることが、こんなにも辛いとは思わなかった。



だから、それならば一人になった方が気が楽だと思えたのかもしれない。



「わかった……」



一言そう返事をすると、雅人は一瞬だけ嬉しそうな表情をした。



それからすぐに神妙な顔を取り繕って、ありがとうとホッとしたように呟いた。
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