浮気の定理
桃子の選択②
しまったと思った時はもう遅かった。
会社でもなるべく一人になることは避けていたのに、たまたま化粧室に一人で行った帰りを狙われたのだ。
「なぁ、いい加減に付き合えよ」
「もう、ほんとに……やめてもらえますか?」
あの画像が水落の手元にある限り、あまり強気には出れない。
弱々しい声でそう言うと、水落はそれに気をよくしたのか、さっきよりももっと距離を詰めてきた。
「この胸も肌も一度は俺に見せてくれたじゃん。一度も二度も同じだろ?」
仰け反るように水落から顔を背けながら必死に抵抗するけれど、この男は怯まずに詰め寄ってくる。