浮気の定理
「おい!なにしてんだ!」



息を切らしたような怒鳴り声が聞こえたのは、もうダメだと諦めかけた時だった。



気がつくと、目の前にいたはずの水落は誰かの手によって引きずられるように私から離れていった。



チッと舌打ちをして、水落はその場から立ち去る。



この男は弱いものには強いが、強いものには弱い。



きっと急に現れたその人と、対峙するには分が悪いと思ったんだろう。



拍子抜けするほどあっさりと、水落は去っていった。



ホッとしたと同時に気が抜けてその場に崩れ落ちそうになる。
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