浮気の定理
それでも私はあの日のことを話すのを躊躇した。



この期に及んで、やっぱり山本に知られるのが辛いと思ってしまう。



「一年前の飲み会のときからだよな?お前らがおかしくなったのって……
あの日、水落がお前を送っていってからだろ?」



心臓がドクンと音を立てた。嫌な汗が出てくる。



まさか、山本がそこに気づいてるとは思わなかったから……



何も答えることが出来ずに、山本をただ呆然と見つめる。



そんな私を見て察したのだろう。



彼はやっぱりといった顔で、ガックリと肩を落とした。



「あの子の言った通りだ……」



そう誰に言うでもなく山本は呟いた。
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