浮気の定理
「え?あの子って?」



そう聞くと山本は、いや、何でもないと言いながら、ビールを煽る。



それからタンッとジョッキをテーブルに置くと、私の方に向き直って言った。



「あの日のことは俺にも責任があると思ってる……

だから、ちゃんと何があったか話してくれないか?力になりたいんだ」



「……なんで、山本に責任があんのよ?関係ないでしょ?」



そう、私が勝手に酔っぱらって、あの男の企みに気付かなかっただけだ。



彼にはなんの責任もない。
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