浮気の定理
あのとき……堕胎をして、体がまだ本調子でないありさに相談するのは憚られた。



娘二人を忙しくてあまり家にいない夫の分まで働きながら育てていることも、遠慮に繋がる。



ありさはなんで言ってくれなかったのかと言うけれど、それはそんな環境にもあるのだ。



それに心配してくれるのはありがたいけれど、言ったところで何かしてくれるとは思えない。



それならば心配かけるだけの相談なんかしない方がいい。



それは涼子の時で立証ずみだった。



誰かに助けてほしいと意を決してしてしまった電話は、涼子に重荷を背負わせてしまったような気がしたから……
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