浮気の定理
「あ、じゃあまた来月ね?」
そう言って電車を降りていく真由を見送りながら、自分はもしかしたら真由に聞いてもらいたかったのかもしれないと思った。
聞いてもらった上で、叱られたかったのかもしれないと……
「……真由」
そう引き止めるように名前を呼んでしまってからハッとして口をつぐむ。
真由はホームに降り立つと、ゆっくりこっちを振り返った。
それから憐れむような顔で私の目をジッと見つめながら口を開く。
「ありさ……和也さんと娘さんたち、大事にしなよ?」
真由がそう意味深な言葉を放ったと同時に、ドアがプシューっと閉まった。