浮気の定理
「えっ?」



思わず聞き返すと、彼女はさらに近づいてきて私の耳に顔を寄せてくる。



「飯島くん、風邪で休みらしいわよ?

大丈夫かしらねぇ?男の一人暮らしだっていうのに」



さも心配そうにそう言ってはいるけれど、本心は興味本意に違いない。



その証拠に続けられた言葉には、心配の欠片も見当たらなかった。



「彼女にでも看病してもらってるのかしらねぇ?飯島くん、モテそうだし」



ニヤニヤしながらそう言うと、菊地さんは何事もなかったかのようにレジへと歩いていった。
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