浮気の定理
オートロックがついてるわけでもない、少し古めのマンションは、なんなく入ることが出来る。



エレベーターに乗り込み5階のボタンを押すと、急に自分が大胆なことをしているような気持ちになった。



男の一人暮らしの部屋にのこのこ訪ねていくなんて、普段なら有り得ない。



だけど、一人で寝込んでいる飯島さんのお見舞いに来たんだと自分に言い聞かせれば、悪いことじゃないように思えた。



ガサガサとドラッグストアのビニール袋を鳴らしながら、5階の廊下を歩く。



506号室の前まで来たとき、一瞬チャイムを押すのをためらった。
< 402 / 730 >

この作品をシェア

pagetop