浮気の定理
そう、やましい気持ちがあるわけじゃない。



純粋に心配なだけだ。



ようやく決心がついて、チャイムに指をかける。



えいっと心で呟いて、勢いよくそれを押した。



――ピンポーン……



ドアの向こうで間延びしたチャイムの音が聞こえる。



緊張しながら彼が出てくるのを待ったけれど、なかなか出てきてくれない。



しばらく待ったあと、もう一度チャイムを押してみようかと思ったけれど、すぐにそれを打ち消した。



寝ているのかもしれない。



無理に起こすのも忍びない気がして、やっぱりこのまま帰ろうと思った。
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